2024/1/14 ON AIR

 こんばんは。赤瀬アキノリです。二〇二四年一月十四日、日曜日。午前一時を回ったところです。この時間は赤瀬アキノリのエナジーラジオをお送りいたします。

 あのぉー、最近ようやくクローゼットから厚手のコートを出しました。いや遅すぎないかって思われるかもしれませんが、わりとねえ、毎年こんな感じなんですよ。いやなんかー、日中の最も暖かい時間帯を想像して、朝に家を出ることが多くて――だから結果として他の人と比べると、大体薄着なんですね。やっぱりなんだろ、午前中に厚着をしてしまったがために昼間になって「やっぱりあちい」ってなるのが嫌で。だから朝のうちだけ多少肌寒いのを我慢しているわけなんですよね。まあでも、昼間もそれほど気温が上がらず、結局「寒いじゃねえか」なんて時もあるわけですが……。

 さて、一月ももう半分ということで、いよいよ冬本番という感じの気温となってきました。少し外を歩いているだけでも、手がかじかんでくるほどです。

 僕は今日ここに来るために電車を使って来たわけなんですが、向かい側の座席にいた女子高生の集団になぜか笑われたんですよね。別に何か特別変な行動をしたとか、そういうことは全くないはずなんですけど。いやー、本当になんだったんだろう。

 しかもこういうこと、今回だけじゃないんですよ。全く知らない女子中高生に笑われるってことがここ数年とても多くて。いや本当になんでだろうって感じなんですよね。例えば、ステーキガストで友達とご飯食べていた時も笑われたこともあるし、スーパーで買い物をしていたら、中学生くらいの女子二人組に指さされて笑われたこともあるし、教育実習に行った時も女子の集団に笑われて。毎回共通していえるのが、大体なんかコソコソ耳打ちしながら会話していて、なんかわかんないけどニヤニヤ見てくるわけですよ。

 こっちとしては何も変なことをしているわけでもないのに、なんか笑われたらあんまりいい気はしないですよね。先に言っておくと、電車に乗っていた時は別にイヤホンから音漏れしていたとかそういうのはないし、独り言をぶつぶつ言っていたとかもないですよ。

 漫画のネタをただ考えていただけっ!

 だからなんも面白いことなんてあるわけないっ!

 ステーキガスト行った時だって、友達が席を外しており、なおかつ両隣のテーブル席が空いているにもかかわらず笑っていたから、僕のことで笑っていることは、ほぼほぼ間違いないんですよね。

 で、なんで僕を見て笑っているんだろうと、その理由を探るために彼女たちを観察してみるわけですが――すると今度は彼女たち、「別に何もありませんけど?」みたいな感じで平然とし始めるんですよね。いや、気のせいかなあと思った頃に、彼女たちの方を見るとやっぱりこちらを見て笑っているんですよ。

 いや、本当になんだろうなって。こちらとしては色々考えるわけですけど、見ていた感じでは、めちゃめちゃ馬鹿にしているって感じでもないし。かといって「あの人、カッコイイよね」って感じで話していそうもないし。例えるなら「なんかあの人、数学の山内に似てね?」、「うん、わかる」みたいな感じでなんか笑われている、みたいな。いや、誰かに似ていたかなあ。そう考えてスマホの画面に反射した自分の顔をじっと見つめてみるわけですよ。誰に似ているんだろう……。

 うーん、目元は――

 かろうじて、ユーチューバーのヒカルさん?

 さて、そんなこんなで始めていきましょう。赤瀬アキノリのエナジーラジオ!

   ♪♪♪

 この時間は赤瀬アキノリのエナジーラジオをお送りいたします。今日のメッセージテーマは『今思えば馬鹿だなあと感じた出来事』。自分自身のことでも、身の回りにいる人でもかまいません。馬鹿だなあと感じたことをどしどしお送りください。番組内で紹介された方には、特製ステッカーをプレゼントいたします。

 さて、皆さんは去年のクリスマスはどのように過ごされましたか? 二十五日は月曜日だったということで、お仕事の方が多かったかもしれませんね。なのでおそらく今回はその前日と前々日くらい? 土日の街中ではカップルどもが出歩いていたことでしょう。ちなみに僕は今年のクリスマス、なーにも予定がありませんので、静かに家で自粛していました。

 皆さんはちゃんと自粛していましたかー? 新型コロナウイルスやインフルエンザ、あとええと……そうそうプール熱なんかも流行ってるって言ってた。だから自粛――自粛が一番!

 聞くところによればクリスマスって精神衛生上あんまりよろしくないらしいんです。以前、職場で行われた講習会に来ていた心療内科の先生が話していたことですが、ライフイベントっていうのはストレスになりやすいそうです。結婚や転職、引越など必ずしも悪い結果を及ぼしそうにみえないものだったとしても、人間にとってはストレスとなりうるそうです。さらにはストレス指数みたいなものもあるそうで、結婚が五十点、転職が三十六点、引越が二十点、些細な違反行為は十一点だそうです。ちなみにクリスマスはですね、十二点なんですって。些細な違反行為よりストレスなのがクリスマス。だからクリスマスは自粛しましょう! とりあえず今年の渋谷のハロウィンくらい自粛してもろて。人は多いけど全然仮装してないし、今年も軽トラックひっくり返らないし、なんだか今回は面白みに欠けるなあ――みたいな感じでお願いしまーす。そういえば渋谷駅、「ハロウィンの会場ではありません」みたいな看板がありましたよね。あんな感じで名古屋駅もクリスマスツリーを置くんじゃなくて、「名古屋はクリスマス会場ではありません」みたいなでっかい看板出してほしい。で、クリスマスなんて存在しなかったんだって感じで年を越したい。

 ええと……あの、冗談ですよ冗談。

 いやー、毎年クリスマスは家にこもっていようと思ってはいるのですが、なんだかんだ用事があったりして、街中に繰り出すことになってしまったんですよ。おととしのクリスマスなんて僕、なんと東京にいましたからね。なんでよりによってクリスマスに東京なんだよって感じなんだけど、推しのライブがあったらしゃーなしですよ。とりあえずまずは一人で美術館行った後、時間が余ってしまったので、特にすることもなく東京の街をぶらぶらするわけですよ。渋谷に代官山、恵比寿……いや本当にねえ、クリスマスに恵比寿ガーデンプレイスに行くんじゃなかったと後悔しつつ……最終的には秋葉原にたどり着くわけなんですが。結構寒かったので、服を買おうと思ったんですよ。東京まで来てユニクロで服を探しているってのも、なんだかシュールだなあって感じですが。

 そうしたら、突然電話がかかってきて。スマホの画面を見てみたら自分の母親からだったんですよ。なんだろうって思いながらも、片手に持ったヒートテックを戻して、電話に出るわけです。

「もしもし」

「何? あんた、外にいるの?」

「あ、えっ……うん。ちょっと買い物で」

 秋葉原に来た辺りで少し忘れかけていたわけですが、ここで再び思い出すわけですよ。

 そういえば今日はクリスマスだった――って。

 電話に出た時、もちろん店内にいたわけなのでクリスマスソングが流れまくっているわけですよ。ええと、何だったかなあ。

 そうそう、マライアキャリーの『All I Want for Christmas Is You』が流れていたんです。

 普段はめちゃくちゃ察しの悪い母親なんですが、こういう時に限ってなんか勝手に空気読み始めちゃってこう言うわけです。

「そう……今忙しいならまた今度でいいわ」

 いやいやいやいや。

 母親は電話を切ろうとするわけです。彼女か誰かといると思っているんでしょうかね。こちらとしては東京に来ているわりに結構暇していて。先ほど推しのライブがあってとか言いましたけど、何ならそのライブは明日の午後だし。いや、あのねえ、うん年ぶりの東京だったわけですよ。だからせっかく行くなら前日入りして色々見て回ろうと。そういう魂胆だったわけ。でも結果としてさしてやることなく、ホテルのチェックインまで時間をつぶしている状態だったんですねえ、これが。

「いや別に忙しくないからいいよ。何?」

 そう言って母親に訊ねるわけですが、特段たいした連絡事項もないようで。

 そうしてほんの数分だけ話して電話を終えたわけです。いや、何だったんだろうこの電話、と当然僕は思うわけですよ。

 もしや、クリスマスに何しているか探るために電話をかけてきた?

 ちなみに母親からの電話が終わった後、店内では山下達郎の『クリスマス・イブ』が流れていました。

 いやぁ、歌詞がなんとも心にしみますねぇ。

 日曜クリスマスの東京の街。出歩く僕って、なんとも馬鹿だなあ。

《小学三年生の頃、自作アニメーション映画『アイスくん~アイスロボと湖の守り神~』を脳内で上映しながら登校していた僕。そしたら「止まれ」の標識に頭を激突。それを目撃した通りすがりの大学生にめっちゃ笑われました》

《赤瀬アキノリのエナジーラジオ!》

 この時間は赤瀬アキノリのエナジーラジオをお送りいたします。メッセージテーマは『今思えば馬鹿だなあと感じた出来事』。僕みたいにクリスマスに東京の街中を出歩いて馬鹿だなあ、とか。自分自身のことではなくても、身の回りにいる人でもかまいません。馬鹿だなあと感じたことをどしどしお送りください。番組内で紹介された方には、特製ステッカーをプレゼントいたします。

 そしてさらに――皆さんからのメッセージで「うん、これは確かに馬鹿だなあ」って感じたエピソードには、ポケモンコンテスト審査員として知られる、スキゾーさんのような言い回しで「いやぁ馬鹿ですねえ~」とコメント差し上げたいと思いますのでよろしくお願いします。スキゾー? 誰だよそいつって? 知らない人はポケットモンスターアドバンスジェネレーションをご覧ください。

 さてさて、早速メッセージをご紹介したいと思います。ラジオネーム、チャーハンにライスさん。

 中学生の頃、彼女と市民プールに行った時の出来事です。

「お待たせー」

 と、遅れて登場した彼女。その子は学校の授業で使うようなスクール水着を着用していました。でもなんだか見慣れたスクール水着のはずなのにどうも際どすぎます。ひかえめな子だったので、谷間という谷間のようなものはさほど確認できませんでしたが、それでも学校の水泳の授業で見たそれとは思えないほどに、胸元が大胆に露出されており、なかなかヤバいです。まさかスク水がこんなに過激で卑猥だったとは!

 日ごろスクール水着をまじまじと観察することがなかったので、いやまあこんなものなのかなあ。と、一瞬思いかけましたが、やはり何かおかしい気がしてなりません。いくらなんでもスクール水着にしては露出の度合いが異常です。僕はその原因をつきとめるため彼女の水着を観察します。「えっ、どうしたの?」と言われ、不審に思われながらも、きょろきょろと彼女の周りを回ったりしてようやく判明しました。

「あのさあ……その水着、前後ろ逆じゃない?」

「あっ」

 彼女はそそくさと更衣室へと戻っていきました。つくづく馬鹿だなあって思いました。

 いやぁ馬鹿ですねえ~。

 そっかー。スクール水着の種類によっては、前と後ろとでデザインが似ていて、背中が前側より露出しているものもあるもんね。なるほどこういうこともありえるかー。

 僕もユニクロで買ったエアリズムのパンツ、間違って裏返しで履いちゃうことがあります。エアリズムって表と裏が結構差がないんですよね。だからよく間違えるんですよ。半日くらいしてから気づいた時には、これを元に戻そうかこのままいくべきか迷っちゃったりして。ね、馬鹿でしょ?

 続きまして、ラジオネーム、相方はチンパンジーさん。引越をしてきたばかりの頃の話です。読書が趣味である私は、近場に本屋があるか調べました。グーグルマップに本屋と打ち込んで検索すると『紀伊国屋本店』という本屋がヒットしました。

 そしてマップを頼りに現地に向かうのですが、本屋のある通りまで来たところで、「あれ? おかしいな」と思い始めました。そこには大型書店なんてとてもなさそうな人気のない道がずっと続いていたのです。若干の疑念を抱きながらそのまま進んでいくと、気づけばマップのピンが指し示す場所をすっかり通り過ぎてしまっていました。そして再度、適宜マップをチェックしながらゆっくりと進んで行ったところ、例の『紀伊国屋本店』は確かに存在しました。

 和菓子屋として。

 いやぁ馬鹿ですねえ~。

 グーグル先生も間違えちゃうんですねえ。そっか、よくよく考えたら、例の大型書店って『紀伊国屋本店』じゃなくて、『紀伊國屋書店』だもんね。グーグルも名前が似ているから本屋だと思っちゃったんだ。よく見ないとですね。

 P.S.現在のグーグルマップでは是正されているため、私のように例の和菓子屋に誘導される民はいないと思われます。なるほどそうなんですね。ならよかったです。

 続きまして、ラジオネーム、大阪の銀将さん。私の母は料理でよく失敗します。本来なら砂糖を入れるところ、間違って塩を入れてしまい、とても塩辛いすき焼きが出来上がってしまうことがありました。この時ばかりはさすがに父の機嫌をひどく損ねたこともあって、母は対策を練ったわけですが、それがなかなかのアホっぷりでした。

 母「これからすき焼きつくる時は出来合いのタレを使って作るようにするで」

 どうやら再発防止策を講じられたのはすき焼きだけのようです。

 いやぁ馬鹿ですねえ~。

 たぶん、この先も煮物とか作る時に間違えちゃうんだろうなあ。事前に割り下の味見をするとかさ、根本的な対策しないとミスはなくなりませんからねえ。

《中学二年のテスト期間。部活の朝練もなくなってようやく時間が取れたので、僕は自作の月刊コミック誌『おもしろコミック十二月号』に載せる漫画を描いていました。すると両親がそれに気づいて、「漫画なんか描いてないで勉強しなさい」と注意してきました。「うん」と答えましたが、内心は「朝いつも勉強なんかしていないんだから、漫画描いてたってよくない?」ってのと、定期テストなんかより五年間欠かさずしていた連載をここでストップさせる方がまずいよねって思ってました》

《赤瀬アキノリのエナジーラジオ!》

 引き続き、番組では『今思えば馬鹿だなあと感じた出来事』を募集しております。自分自身のことでも、身の回りにいる人でもかまいません。馬鹿だなあと感じたことをどしどしお送りください。番組内で紹介された方には、特製ステッカーをプレゼントいたします。

 そうだなー。僕がねえ、「この人って馬鹿だなあ」と感じた人は、大学の時所属していた漫画研究会の先輩でしょうかね。めちゃめちゃお酒に強いと言っている先輩がいたんですよ。ここで間違えちゃいけないのは、お酒に強いと言われている先輩じゃなくて、お酒が強いって言っている先輩ってこと。そうなんですよ。自称お酒が強いなんです。その先輩いわく、この前スピリタスっていう酒を飲んだって言うんですよね。そのスピリタスっていうのはアルコール度数が九十六パーセントもあるお酒。火吹き芸なんかに使われたりもするくらい、アルコール度数が非常に高いんですが、それを例の先輩は飲んで平気だったって言うんですよね。その話を聞いた当時の僕は「へえ、そんなにお酒強いんだ」って思っていたわけですよ。

 で、とある日、僕の家で鍋パーティーをしようって話になったんですよ。先輩たちが僕の家に訪れるわけです。もちろん例の先輩も。

「赤瀬君、酒いっぱい買って来たから。杏露酒、特にこれがおいしいから」

 当時はお酒のことなんて全然知りませんから、お酒をよく飲む人はこういうのをたしなむのか、なんて思っていたわけですが、今思えば見た目のわりに随分と可愛らしいお酒を飲む人なんだなって思いますね。どちらかと言えば紹興酒とか日本酒とかが似合いそうですから。いや、なんていうか身長が高いんですよ、その人。たぶん一八五から一九〇くらいあったんじゃないかなあ。しかも合気道の部活にも入っている、二十代後半の男子大学生ですからね。なんだかわからないんですが、彼、八年も大学にいるそうです。大学院じゃなくて学部だけで八年。

 まあそんなこんなで、みんなで鍋をつつきながら、例の八年先輩は老人の説教話のように話し始めるわけですよ。

 「色々自由にやれるのは大学生までだ」とか、「社会経験として学生のうちに色々バイトしておいた方が良い」とか、「誰かに何か親切にしてもらったことがあったなら、必ずしもその人に返してあげる必要はなくて、別の誰かに親切にするのでも良い」とか。別の場所で違う人が同じようなことを言っていたなあ、と感じつつも「そうなんですねえ」と言って、僕は良い子ちゃんしていたわけです。

 それで鍋パーティーが始まって二時間が経過した頃――

「そろそろ鍋の具材足すかー」

 って八年先輩が立ち上がったんです。当然、僕は家主ということで、しかも後輩だから先輩に全て任せるのも悪いから、僕も手伝おうと思って一緒にキッチンに向かうわけです。

 するとその道中、先輩がしゃがみ込んで洗濯機をなにやら触っているんですよね。

「あれー? なんだか開かないなぁ?」

 当時、僕の家で使っていた洗濯機はドラム式じゃなくて縦型でした。だから正面に扉があるわけないんですよ。

 いや、そもそもなぜ洗濯機を開けようとしているんだ。行動が謎すぎて僕は先輩に訊ねたわけです。

「何してるんですか?」

「いや、冷蔵庫が全然開かなくて」

「先輩、それ洗濯機です。冷蔵庫はあっちです」

「あーそうだった? ごめんごめん。俺、乱視だからさあ」

 いや、乱視でも洗濯機と冷蔵庫は間違えんでしょ!

 普段そんなにも目が不自由って感じの挙動しているわけでもないのに。

 ここで当然思うわけですよ。この人もしかして酔っぱらってるんかなって。お酒に強いふりをしている疑惑がわいてくるわけです。

 それからしばらく経った日の出来事なんですけど、卒業生の送別会があって、八年先輩も会の主役として参加していたわけです。

「送り出される側だし、誰かを介抱するのに勤しむ必要がないから、今日は飲みまくるわぁ!」

 と、先輩は意気揚々とお酒を飲んでいくわけです。ペースは結構早くて、開始三十分で三杯くらいおかわりしていたと思います。ええ、主に杏露酒を。

 あまりにペースが早いので僕は少し心配していたわけですよ。大丈夫かなあって。

 で、宴会が始まって一時間が経過した頃、例の先輩の姿が見えなくなったんです。トイレに行ってくると行ったきり、四、五十分戻って来なくて。あらら。もしかしてって感じです。

「先輩、全然戻ってこないけど、どうしたんだろう」

 と、周りの人が心配し始めた頃、ようやく先輩が戻ってきたんです。で、第一声がこれです。

「みんなごめん、急に仕事が入ったからもう帰るわ」

 その言葉を聞いた漫研の部長も、これにはさすがに驚いた様子で訊ねるわけですよ。

「え、今から?」

「ああ、急に仕事が入って」

 あたかも取引先との商談が急に入ったような感じで先輩は言ったんです。バイトじゃなくて仕事っていうところが先輩らしい。

「そう? まあ用事が入ったなら仕方ないけど……。この後、実は卒業生のメッセージの時間を用意していたけど、どうします? 何かあれば今少しだけ時間取れますが?」

「あー、えーと。じゃあ少しだけ。みんな今日はありがとう。これから部を引っ張っていくのはみんなだから。頑張って。四年間なんてあっと言う間だから悔いのないよう楽しんでください……じゃ、俺は仕事に向かうんで。すまないけどお先」

『お疲れ様でーす』

 って、みんなは返すわけだけど。

 僕はひそかにこう思っていました。

 先輩って馬鹿だなあって。

 ワンチャン、本当に仕事が入っていた可能性もありますからね。微々たる可能性だとは思うけれど。先輩の言っていたことが本当だったとして、アルコールがそれなりに入った状態でバイトって、それはそれでなかなかヤバいけど。果たしてあの後、先輩は大丈夫だったんでしょうか?

 さて、番組では『今思えば馬鹿だなあと感じた出来事』を募集しております。エピソードは自分自身のことでも、身の回りにいる人でもかまいません。馬鹿だなあと感じたことをどしどしお送りください。番組内で紹介された方には、特製ステッカーをプレゼントいたします。

《職場で昼食をとっている最中、ギャグ漫画のアイデアを思いついてしまい、脳汁ドバドバ状態。そのあまりの面白さに、場所をわきまえず爆笑してしまいそうになりました》

《赤瀬アキノリのエナジーラジオ!》

   ***

 地下鉄車内、私は隣に座る友達を小突く。

「ねえ、あれ見てよ」

「え? 何?」

「ほら、あの向かいに座ってる男の人」

「……ふふっ、なんか床を見つめながらめっちゃニヤニヤしてんだけど。ウケる」

「だよね」

 例の男は本を読んでいるわけでも、スマホを見ているわけでも、イヤホンもつけているわけでもなかった。ただニヤニヤと気色の悪い笑みを一人で浮かべているのだ。

 こちらの視線に気づいたのだろうか。例の男は顔を上げ始めたのだった。私は慌てて友達の袖を引く。

「うわっ。ヤバっ。なんかこっち見てきたんだけど」

                                            了